片づけの先に、ミニマリストがいた。
片づけを続けていると、ふと思う日が来ます。「これって、突き詰めるとミニマリストになるのかな」と。
私にはその答えを考えるきっかけになった、忘れられない会話があります。
スプーンの音が、嫌。
以前、ミニマリストの方と話す機会がありました。その人が言ったんです。引き出しを開けたとき、中でスプーンとフォークがずれて鳴る——あの音が嫌なんだ、と。
私は、われながら良い提案をしたつもりでした。「タオルを敷いたら、音も出なくていいんじゃないですか?」
「それも嫌なんだよね」
え、それも嫌なの?
正直、まったくわかりませんでした。当時の私は片づけを始めたばかり。引き出しの音どころか、引き出しがちゃんと閉まらないことに悩んでいたんですから。
減らしてみて、わかったこと
それから私は、少しずつ物を減らしていきました。すると、思ってもいなかった変化が起きたんです。
部屋がきれいになった——ではなくて。
目に入る物が減ると、考えることが減ります。「これどうしよう」と思う回数が減る。探さない。迷わない。判断しない。
そして気づきました。あの人が嫌がっていたのは、たぶん音そのものじゃなかった。
タオルを敷けば、音は消えます。でも今度は「タオルを洗う」「タオルがずれる」「タオルを買い替える」が生まれる。物への対処は、物を増やす。あの人はそれを、とっくに知っていたんだと思います。
でも私は、ミニマリストにはなりません
じゃあこのまま突き詰めれば、私もミニマリストになるのか。
ならない、と今は思っています。
ミニマリストは、限りなくゼロに近づけていく人。私は、「今の自分が管理できる量」に戻す人。似ているようで、ゴールが違うんです。
若い頃は、全部覚えて、全部管理できました。今は違います。体力も、気力も、覚えていられる量も変わりました。だから減らす。ゼロにするためじゃなく、今の自分の手に収まるサイズに戻すために。
その時間を、家のためでも誰かのためでもなく、自分のために使う。私の片づけは、そのためにあります。
まだまだ途中です。あのミニマリストの方からは「もっと違うよ」と言われるかもしれません。でも、片づけが苦手だった私にしては、やっとここまで来られた。それだけで十分だと思っています。
まず今日の、ひとつだけ
もし興味がわいたら、今日ひとつだけ。
いちばんよく開ける引き出しを開けて、音を聞いてみてください。
ガチャッと鳴ったその音に「ちょっと嫌かも」と思えたら——それがあなたの片づけの、はじまりの音です。