親の施設見学・少し先の準備

施設見学で、私は「玄関」と「お風呂」を見る。

今は歩ける親の、少し先を考えるために

親や家族の施設見学に行くと、まず気になるのは居室の広さや食事、料金だと思います。

もちろん、そこも大事です。

でも、介護や医療の現場で働いてきた私は、施設に入ると無意識に「玄関」と「お風呂」を見ています。

今は自分で歩けていても、数年後まで同じとは限りません。

今回は、施設を「この先も暮らす場所」として考えるときに、私が玄関とお風呂で見ているところを書いてみます。

きれいな居室より、先に玄関を見る

長く暮らした家では、トイレまでの距離や段差の場所を、体がなんとなく覚えています。

年齢を重ねると、新しい場所に慣れるのが難しくなることもあります。

だから私は、できることなら同じ場所で長く暮らせるほうが、本人もラクなのではないかと考えています。

今は歩けていても、将来は車椅子が必要になるかもしれません。

急変して、ストレッチャーで搬送される可能性もあります。

そこで玄関に立つと、次のようなところを見ます。

二重扉を見るのは、利用者さんが外へ出てしまうことがあるからです。

屋根や床を見るのは、雨の日に車椅子で出入りする場面を想像しているからです。

寸法を測るわけではありません。

「本人と職員さんと救急隊員が、ここを一緒に通れるかな」と、頭の中で動かしてみています。

建物が、最初から介護のために造られたとは限らない

施設の中には、コンビニの跡地や、寮・ホテルだった建物を改修して使っているところもあります。

もちろん、改修した建物だから悪いわけではありません。

ただ、最初から介護施設として造られた建物とは、玄関や廊下、エレベーターの広さが違うことがあります。

建物の構造によっては、ストレッチャーをまっすぐ入れにくい場面もあります。

そういう時は、職員さんや救急隊員さんが工夫して対応することになります。

だから見学の時点で、次のように聞いておくと、あとで「思っていたのと違った」を減らせると思います。

「車椅子になった場合は、どこから出入りしますか?」

「救急搬送の時は、どの動線を使いますか?」

お風呂では、床まわりも見る

次に見るのがお風呂です。

お風呂場そのものはもちろん見ますが、私は案内してもらっている途中の床も見ます。

水滴が落ちていないか。

滑りやすそうな場所はないか。

杖や足元が不安定な方が通ったときに、危なくないか。

病院では、水滴にはかなり気をつけるように言われます。

たった少しの水でも、そこに杖が乗ると滑ることがあります。

尻もち程度で済めばいいですが、高齢の方の場合は骨折につながることもあります。

だから私は、お風呂そのものだけでなく、浴室まわりや廊下の床も見ます。

設備が新しいかどうかだけではなく、スタッフさんが普段からどこまで足元に注意しているか。

そういう小さなところも、施設での暮らしやすさにつながると思っているからです。

今は必要なくても、特浴があるかを見る

今は普通のお風呂に入れる方でも、将来は立ったまま、または座ったままの入浴が難しくなるかもしれません。

そこで、寝たままや座った状態で入浴できる特浴があるかを確認します。

機械浴や特殊浴槽と呼ばれるものです。

特浴がない場合も、すぐに候補から外す必要はありません。

大事なのは、本人の状態が変わったときに、施設がどう対応するのかを聞くことです。

施設の種類や契約によって、対応と料金は変わります。

「お風呂はありますか」だけで終わらず、体が動きにくくなった場合まで聞いておくと安心です。

お風呂を見られないときに聞きたいこと

見学の日に入浴中だったり、衛生面の都合があったりして、お風呂を見られない場合もあります。

そのときは、職員さんに聞きます。

設備が新しいかどうかだけでなく、入居後にどんなペースで、どんなふうにお風呂へ入るのかを知るための質問です。

「ある・ない」だけで決めない

玄関に屋根がない。

特浴がない。

だから悪い施設、という話ではありません。

今の本人に必要なもの、将来必要になりそうなもの、家族が負担できる費用はそれぞれ違います。

私が見ているのは、設備の合格・不合格ではありません。

本人の状態が変わったとき、ここでどんな暮らしになるのか。

そのとき施設はどう対応し、家族には何が必要になるのか。

きれいなパンフレットだけでは分からない部分を、玄関とお風呂から想像しています。

100%理想どおりの施設を探すのは、かなり難しいと思っています。

だからこそ、全部を求めるのではなく、「自分たちは何を優先して見るのか」を先に決めておく。

今は歩ける。

でも、歩けなくなったときのことも、見学のときに少しだけ聞いておく。

それだけでも、あとから慌てる場面を少し減らせると思います。

施設見学は、今の状態だけを見る時間ではなく、少し先の暮らしを想像する時間でもあります。

玄関とお風呂は、そのヒントが出やすい場所だと私は感じています。